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人の気持ちを考える話を、今は長く読みたくない。
そんな夜なら、新美南吉の短い童話『飴だま』を一篇だけ読む選び方もあります。
渡し舟に、母親と小さな子ども二人、そして侍。
侍が刀を抜く理由は、子どもを傷つけるためではなく、一つの飴を二つに分けるためでした。
結末まで触れながら、この動作の前後を読んでみよう。読み終えて気分を変えなきゃ、と頑張る必要はありません。
母親の予想と、侍が実際にしたこと
青空文庫の本文では、暖かな舟の上で侍が居眠りをします。子どもたちは飴を欲しがりますが、母親の手元には一つしかありません。
侍が目を開けると、母親は、居眠りを邪魔されて怒っているのだろうと思います。刀を抜いて近づかれたときには、子どもたちをかばうほど怖くなる。
この怖さを、早合点だと片付けなくてもいいと思います。本文を追うこちらにも、侍が何をするかは、まだ示されていないから。
そして侍がするのは、飴を舟のへりに載せ、二つに割って子どもたちへ渡すこと。
同じ刀が、母親の想像した使い方とは違う働きをする。その一動作で、場面の受け取り方が変わるんだね。
親切を説明せず、また眠る結末
侍は、長く自分の気持ちを説明しません。飴を分けると、元の場所へ戻り、また居眠りを始めます。
私は、この戻り方に目が留まります。親切だったという評価を話し続けず、舟の上の動きがまた静かになる。最初の居眠りと最後の居眠りを並べると、その間にしたことが、いっそうはっきりするからです。
紙で読む候補として確認したのは、新美南吉作・長野ヒデ子絵、にっけん教育出版社の本。ISBNは9784434030314です。国立国会図書館の書誌でも著者と絵を確認できます。この記事の読解は青空文庫の本文に基づき、絵本の画面を説明したものではありません。
誰かを信じよう、という教訓を今の自分へ急いで当てはめなくていい。
まずは、怖かった刀が何をしたか。飴を二つにするところへ、もう一度戻ってみてもいいね。